通常、種々の社団法人や財団法人が資格を与える主体となっているが、臨床心理士のように、児童相談所や小中学校のような公的機関が優先的に採用してくれるものもあれば、ぜんぜん就職の保証にならないものもある。
せっかく資格試験の勉強をする以上は、事前にガイドブックを調べたり、主宰団体への直接の質問を通じて、どのような明確な特典があるのかを確認しておきたい。
というのは、ライセンスの時代であるという強迫観念を利用した資格商法ともいうべき勧誘があるからだ。
大体電話やダイレクトメールなどで向こうのほうから勧誘してくる資格にはろくなものはないと思ってまちがいはない。
取りたいライセンスが決まったら、次は勉強をしなくてはいけない。
この場合、おおむね二系統の勉強をすることになる。
一つは、その資格を取るために専門学校や大学、大学院に入らないといけないケースで、その代わり、その学校を卒業すればかなりの確率でその資格が得られるものである。
医師や看護婦、作業療法士などがそれにあたる。
これについては、まず当該の学校に入ることが、当面の目標になるので、社会人入学のための勉強術として、まとめて後述したい。
もう一つのケースは、特別の学校に行かなくても、講習を受けたり、資格試験に合格すれば得られるライセンスである。
その代表例が、宅地建物取引主任者であるが、司法試験や公認会計士、税理士もこちらに分類できるだろう。
ここでは、後者の勉強法の原則について触れてみたい。
まず、最初の原則は、可能な限り過去問を入手することである。
これは、大学入試も含めて、受験勉強一般についていえることだが、過去問を通じて、出題傾向と出題範囲をつかまないことには、何を勉強してよいかがわからないだろう。
たとえば、自動車の免許を取得した人ならわかるだろうが、ぶあつい法令集を勉強するより、対策用の問題集を一冊やるほうが、合格には役立つものである。
もちろん、試験によって難易度は異なるが、基本的な方法論は同じである。
気象予報土になるために気象学の教科書を読破する必要はないし、司法試験であっても、オーソドックスな刑法や民法の教科書はせいぜい辞書代わりにしか使わないものだ。
基本的には、過去問をやってみたり、一通り目を通してみて、そこからやるべき勉強を見出したり、設問パターンに合わせた覚え方や解答作成術を身につけていくのである。
場合によっては、過去問を何年分も解いて、その解答を覚えていくだけで、合格点(六割くらいのことが多い)がとれてしまうものもある。
プール問題制といって、その資格に必要な問題をたくさん作っておいて、その中から一〇〇題なら一〇〇題選んで出題する試験もあるだろう。
また、良問であれば、過去に出題した問題でも出すというのは、ほとんどの資格試験で行われているはずである。
余計なことを勉強するより、過去問に専念した勉強のほうが効率がよいのは、資格試験全般にいえることである。
これは、入学試験などと異なり、資格試験というのが、その人の独創性を問うのでなく、その人がその資格に必要な知識や技能を有しているかを問うテストだからである(実際は大学入試でも、過去問による出題傾向の分析のほうが効率的な受験術である)。
たとえば、司法試験に合格した裁判官に奇抜な判決を出されたのではかえって困るのである。
建築士の資格にしても、オリジナリティのある設計に対して与えられるのでなく、設計の最低限のルールが守れて、安全性の確保された家を作れる人に対して、与えられるものなのである。
そこが空間デザイナーといわれる人と建築士の違いなのだ。
だから、資格試験で、どのような知識や技能が要求されているのかは、二、三年分の過去問をみれば大体把握できるものである。
過去問を解いてみて、そこそこ解けたり、その解答集や解説書を読めば、そこそこ理解できるのであれば、その資格試験は、相当有望であると思ってよい。
過去問の有効利用こそが、大人の受験術の第一の基本テクニックである。
合格した先輩の話を聞く次のステップは、実は、可能な限り、合格した先輩を探すことである。
特に短い期間の勉強で合格した要領のよい先輩を探すことだ。
短期間で合格する人は、センスがあって頭のいい人なのでまねできることはあまりないと思われがちだが、そういう人こそ、受験のノウハウをつかんでいる人なのである。
特に何が必要で、何が無駄かがわかっている。
この何が無駄かを教えてもらうのは重要なポイントである。
短期合格者でなくても、合格した人に会えれば、どの解説書や問題集が実用的で、わかりやすいか、試験範囲を網羅しているか、予備校に行く必要があるか、あるならどこの予備校がわかりやすいか、どのくらいの勉強が必要か、何が落とし穴か、何が無駄だったかといったノウハウをつかむことができ、かなり有用な情報が得られるものなのだ。
「親友が受かったから私も」というのは、甘い考えのようで、実は有利なポジションなのである。
もちろん受かった人の情報を鵜呑みにする必要はないが、合格者から可能な限り、情報を引き出し、そこから自分に合ったものを使うというのは、大人の受験術の第二の基本テクニックである。
そういう合格した先輩がみつかったら、とにかく実際に会ってみて、根掘り葉掘り具体的に質問することである。
その人が、資格を取って数年たっている場合は、その資格が本当に使えて、収入や雇用に役立つのかも、単刀直入に聞いたほうがよい。
相手が愚痴をこぼすようであれば、そのライセンスでよいかどうか、多少は再検討してみるべきだろう。
ただ実際は、直接に合格者の知り合いをみつけることは難しいだろう。
その場合は、対策塾や予備校を利用するか、合格体験記に一通り目を通しておくといい。
ただ、対策塾の講師(通常はその試験の合格者)はあまり本音をいわない可能性があるし、合格体験記は、かなり編集されているし、質問もできない。
直接情報よりは、情報の質が落ちることは覚悟しておくことだ。
参考書・問題集の選び方次は、参考書、問題集、解説書選びだ。
合格者と会うことができた人は、一応はそのアドバイスにしたがってみるといい。
ただ、選んだ本がちんぷんかんぷんだったり、一冊を終えるのに時間がかかりすぎそうな時は、もちろん、書店で別の本を探したほうがよいだろう。
やはり参考書や問題集にも個人との相性があるのだということは忘れてはならない。
合格者に会えなかったり、その勧める本が納得いかなかった場合の参考書選びのポイントは、おおむね次の三つになる。
一つ目の重要ポイントは、自分で読んでわかることだ。
理解ができないと入力が困難であることは、前述の通りだが、大学受験などの時と比べて、わからないことを聞ける相手がいないのが資格試験勉強の特徴ともいえる。
その上、その資格の専門書(司法試験なら刑法や民法など、税理士試験なら会計学など)は通常きわめて難解で、理解の助けにならない。
予備校や対策塾に行かずに独学で勉強する場合は、わかる参考書を探すのが生命線ともいえるものだ。
二つ目は、過去問と対比してみて、出題範囲を網羅しているか、多すぎないか、わからない問題に答えてくれるかなど、過去問勉強のサポートになり、過去問勉強に対応するものを選ぶことである。

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